注:10000ヒットアンケート記念小説後編です。
先に前編をどうぞ
「終わっちゃったね、花火」
「そうだな」
花火終了後、河原の遊歩道を歩きながら、不二は手塚に話し掛けた。
灯りはぽつりぽつりと遊歩道に立っている電灯と民家の窓からもれる灯りだけで、周りはうすぼんやりとしか見えない。だが川の水音がよく聞こえることからすると、すぐ隣が川になるのだろう。遊歩道は砂利が敷かれてあって歩きやすくなっているが、他の部分はそれなりに草が茂っていた。
どっちからというわけでもなく、せっかくなので少し遠回りして帰ろうと言う結論に達した。花火大会の会場からは結構歩いたので、もうこの辺までくると人の気配もあんまりない。
幾分秋の涼しさを感じさせる夜風が髪を揺すっていく。その感触が心地いい。
「花火、良く見えたよね。音も凄かったし。場所取りしてくれたタカさん達に感謝だね」
花火の楽しみ方は目で見るだけでは無い。音や衝撃も含めて五感で体感するのが本当の味わいだ。遠くから眺めているだけでは感じられない趣がある。
「ああ」
手塚も夜風を受けながら満足そうにそう答えた。
やがて二人は、橋の下、草のないコンクリートの部分にやって来た。
「……ヤケに機嫌がいいんだな、今日は」
手塚がふと、そんなことを口にした。
「久しぶりに手塚に会えたしね。それに浴衣も着れたし」
「……そんなに嬉しかったのか?」
「もちろん」
「浴衣が? ならばそう母さんに伝えておこう」
「………………手塚、ひょっとして、自覚無いの?」
「何がだ?」
「いやまあ自覚無いなら無いでいいんだけど」
不二としては手塚と会えた方に重点をおいたつもりだったが、手塚は別に受け取ったらしい。手塚らしいといえば手塚らしいのだが。
橋の下をくぐり抜ける夜風に髪を揺らしながら、手塚は呟いた。
「もうだいぶ風が秋らしくなってきたな」
「……そうだね」
「夏休みが終わったら、全国大会だな」
「……それまでに、腕、治るの?」
不二は少し足を止めた。手塚はそれに気付かずに歩を進めた。
二人の距離が少し、開く。
「正直、解らん。今の段階じゃ五分五分らしい」
「そう」
手塚は慰めを言うような人物ではない。そうはっきり言われると、いっそ清々しささえ感じる。
しかし何にしろ、手塚はまだ帰ってこない。
「いい加減、戻るか」
そう言うと手塚は、不二の方を振り返った。
不二は俯いたまま、小さな声でこう言った。
「もうダメ……臨界点超えた」
「……不二?」
不二の不思議な呟きに、手塚は首を捻った。
その瞬間、不二が突然早足で自分の方に歩いてきたかと思うと、噛み付くような勢いで唇を奪われた。
「!?」
思いがけない不二の勢いに負けて手塚はバランスを崩し、後ろに腰をついた。浴衣が汚れることを考えてすぐに立ち上がろうとしたが、不二がそれを許さなかった。そのまま流れで手塚に上から覆い被さってくる。
「く……」
顎を掴まれてわずかに顔を上に向かせられると、相手の舌が口腔の奥深くまで入り込んでくる。息が続く限り口の中を蹂躙したあとでようやく唇を離してもらう事が出来た。
「な……いきなり何をする!?」
口を左手で拭いながら手塚が抗議すると、不二は逆ギレしてきた。
「それはこっちの台詞だってば!!」
「何だ!?」
「だってああもうなんでいきなり浴衣なんか着てるんだよ僕だってそりゃ着て欲しくないって訳じゃなくてそう言ったら嘘になるけどでも浴衣なんか着てくれる訳ないだろうと思ってたからねだるの最初から諦めてたのに着て来るんだもんそんなことされたらもう絶対誘ってるとしか思えないって……」
「ま……待て、お前!」
「だいたい君自分がどれだけ人目ひきつけるのか解っててそう言う服着るのかなあちゃんと自覚してよ今日だってすれ違う何人の女と一部の男が君のことジロジロ伺ってたかそのたび僕ほんと気が気でなくなってたんだからね手塚は僕のものですよーって何度実地で教えてやろうと思ったことだかこんなことならああそうだ僕が女物の浴衣でも着てきっちり女装しとけば普通のカップルに見えるから安全だったんだよねっていうかそのネタは以前とある同人誌で見たからさすがに作者も遠慮しておいたみたいなんだけどでもやっぱり女物の浴衣の僕に押し倒される浴衣の君って構図がサイコーに萌えるんだよね……でも男物でもとりあえず浴衣はだよ浴衣だよ!! もう抱いてくれ襲ってくれ今すぐ食べてくれーって言ってるよーなもんだろう!?」
「か、勝手な事を言うな!!」
手塚にしてみれば予想外の事態だった。まさか不二がそんなことを考えているとは、浴衣にそういう意味があるとは思わなかったのだ。
「でも僕ここまで我慢してたんだよずっと押し倒すの! もう誉めて欲しいぐらいにね!! 久々に会えるからそりゃちょっと期待してたけどでも今日は皆と集まるし皆手塚に会いたいだろうしそもそも期待したところでどーせまたすぐにいなくなっちゃうんだしそれならいっそ期待しないほうがマシかなってそう思ってここ数日気持ち抑えて普通に振舞ってきたのに……」
何かぶち切れたらしく饒舌に澱みなく話し続ける不二を遮るように、手塚は叫んだ。
「いったい、何の話だ!? というかこれは何の真似だ!?」
ちょうど橋の下、コンクリートの上で押し倒されている。これから起こる事態は聞かずとも想像はつくが認めたくはなかった。
「……だから」
不二はそこで少し間を置いた。
手塚を見下ろしながら答える。
「今すぐヤリたい」
ぼこっ
ストレート直球ど真ん中一本勝負な発言に、手塚は思わず目の前の相手の顔を殴った。
拳で。
「い、痛い……」
「………………」
片手で殴られた頬を押さえながら、潤んだ瞳になる不二に、手塚は少しばかりの罪悪感を覚えた。さすがに拳で殴るのはやりすぎただろうか。いやいや、これぐらいきつくやらないとこの常識外れの天才には通用しない。
いくらなんでも、こんな場所で。
「グーで殴ったね……今……ひどい……」
泣きそうな声。うっかり心を動かされそうになるが、鉄の精神で耐えた。ここで折れればそのまま行為に突入するのは目に見えている。
「……当たり前だ……そんなこと、ここで出来るか……!!」
「……解った」
不二は素直に身を引いたかのように、一瞬だけそう思った。
「じゃあここで抱きたい」
「……同じだ馬鹿者!」
再び手塚の鉄拳が飛んだ。
☆★☆★☆
だがそれぐらいで引き下がるような今日の不二ではなかった。何せ数ヶ月の禁欲生活分である。
「…………」
「っ……!!」
両手で浴衣の襟を掴むと、無言で手塚の胸元を肌蹴る。
「不二っ……!」
首筋から鎖骨にかけて軽く歯を立てられ、手塚は悲鳴じみた声をあげた。野生の動物じみた激しさが不二の本気具合を物語っていた。試合なんかじゃなかなか本気を出さないくせに……と、ふとそんな悠長な怒りを感じるが、割った両足の間を駆け上ってくる手の感触に思考はそこで止まった。
「くっ……止め……」
ここをどこだと思っているのだ。
橋の上には時折通る自動車のヘッドライトが見える。止まる車やその辺を歩く人はいないものの、隠れる場所のない外であることは間違いない。万が一堤防沿いを歩く人物が他にいてライトで照らしでもしたら。
「人が……」
「来ないよ。見えたとしてもこの暗さだとシルエット程度だろうし」
手塚の言い分を不二はあっさりと切り捨てた。露にした胸元に唇を寄せており、熱い息づかい混じりに答える。
それでも手塚はなんとか抵抗を試みた。胸の飾りを含んで歯を立てる口や、内腿をさわさわと撫でる手が手塚の官能を駆り立てるが、それに流されないようにするためにも。
「浴衣、が……汚れる……」
上気する息をなんとかコントロールしながら手塚は言う。こんな場所で着衣が乱れるようなことをすれば埃まみれの上液体まみれだ。埃はなんとかごまかせても、液体のほうはどうにもならない。
不二は少し動きを止めて悩んだあと、あっさりと返答した。
「じゃあホテルでも行く?」
「だ……から! 今すぐ手を止めろと言ってるんだ!!」
「でも大丈夫だよ、今日はちゃんとゴム用意してるから。もちろん二人分ね」
そう言うと、帯の結び目の辺りをごそごそと手で探った。
だが、目当てのものは見つからなかったらしい。少しおかしげに首を捻ったが、急にからくりがわかったように手を叩いた。
「あ、そっか着替えたんだよね僕。そのときに忘れちゃったみたいだ」
「あ……あのな……」
「まあいいや、何とでもなるでしょ」
「………………」
それだけ暢気そうに言うと、不二は愛撫を再開した。
何か不二と根本的に話が通じてない気がして、手塚はうんざりした。
自分の世界に入りきったこの天才を止めるのは不可能だと身をもって思い知っている。
そうこうしているうちに、不二の手は手塚の一番弱い部分に触れた。
「ふっ……ぅ……」
我慢など無駄だとばかりに体が高められていく。ゆるやかな動きだったが、胸への愛撫とタイミングを合わせながら下肢にも刺激を加えられるたび、体全体が大きく震える。
赤く染まり始めた乳首を念入りに舌で嬲られると、体の奥にじんわりと熱が沸いてくる。それは下半身に直接与えられる快感とはまた別に手塚を苛んだ。
「馬鹿……離せ……」
「だって……久しぶりだし……それに」
またすぐにいなくなっちゃうし。
だが、不二はその続きの言葉を飲み込んだ。
そのかわりに、ひたすら行為に没頭した。
不二の口は何時の間にか胸元からさらに下に降りてきていた。腹筋を生暖かい舌が這いまわる。唾液で湿った部分に夜風を感じるたび、今いる場所が紛れもなく屋外である事が実感させられる。
その手に最初に見せた性急さはなかった。ただひたすら味わうようにじっくりと弄ばれている。
不意に車の灯りで浮かび上がった不二の背中が見えて、手塚は我に返った。
これ以上進むと本当に止められなくなる。
「やめ……ほんとに、止めろ、ふじっ……」
なんとか体勢を変え顔をどけさせようとするが、不二は強情だった。ぴくりとも動かなかった。
優しい笑みを浮かべて上目遣いで手塚の方を見つめている。
「僕もう我慢できないって言ったよね?」
表情は穏やかだったが、言っている内容は正反対の強さを持っていた。この状態から移動するつもりも毛頭無さそうだった。
それでも手塚はせめて場所を変えて欲しいと懇願する。
「……こんな所じゃ……っ」
「嫌なんだ?」
見抜かれていることに、手塚は居た堪れない気持ちで首を縦に振った。完全に脱がされてはいないものの、胸元と足元が大きくはだけた浴衣は、端から見ればすぐに何をやっていたか想像はつく。今は周囲に人の気配は無いとはいえ、いつ誰がやってくるか解らない。
不二は少し悩んだあと、解った、と言った。
その答えを聞いて、手塚は内心でほっと安心したのだが。
「じゃあとっとと終わらせちゃおうか。君も協力してね」
浴衣の帯はそのまま、不二は更に顔を下にやると、今度は軽く開かれていた両足の間に顔を埋めた。下着を脱がせ、両手で脚の根元を掴んで広げさせると、肩と上半身を使って脚を閉じないように固定する。
「……ひっ!!」
昂ぶり始めていたペニスの根元を両手で支えられ、先端部分を口に含まれる。舌でわざと音を立てながら全体を舐めまわされる。ちゅぱちゅぱと下から聞こえてくる卑猥な音から必死に意識を背けるが、辺りの暗さと川の水音のせいで、異質なその音は余計に聴覚に響いた。縋りつくものを求めて伸ばした指先にコンクリートの硬い感触があって、ここがどこであるかを忘れかけていた手塚に再び意識させた。だが、すでに反抗するだけの気力はなかった。
先ほどまでの緩やかな感覚とは全く異なるダイレクトな快楽に耐えるために、手塚は固く瞳を閉じた。ざらついたコンクリートを掴もうとした指先の痛みだけが、手塚の意識を保たせていた。
「……一回、イかせてあげようかと思ってたけど」
先端をペロリと舐めながら、不二は独り言のようにそう呟いた。すでに張り詰めて透明な液体を溢れさせているそれの根元を左手に添えて指でぎゅっと締め付ける。
「痛……っ」
解放を禁ずる指に手塚が痛みを訴えるが、不二は無視した。
「でも、君は早く終わりたいんだよね?」
「…………?」
「じゃあ今度はちょっと君も我慢してね」
と言うなり、不二は左手はそのまま、右手で手塚の腿をぐっと割り開くとその奥へと顔を寄せた。暗くてよく見えないからか、舌はその周囲を何度か行き来すると、最終的に奥の秘所にたどり着いた。舌先を尖らせて、入り口付近を軽く突く。唾液の濡れた感覚が直に感じられる。
「!!」
不二は手塚の股をさらに肩で押し開き、右手を自由にすると、その指を舌とともにゆっくり唾液で濡らした中へと差し込んでいった。
舌は指の助けを借りて徐々に奥へと入り込んできた。緊張した内壁を柔らかい肉塊が這う感覚は軟体動物に侵入されるようだった。
やがて、十分に解された入り口に、指が一本押し当てられた。そのまま内部へと埋め込まれていく。
「っ……ぅ……!」
久しぶりに使用されたソコは一本の指の挿入でさえ裂けるような痛みを伴った。だが、せめて声が漏れないように、と手塚は片手で口を抑えた。もう片方の手で羞恥に塗れた顔を覆う。不二もその行動には気付いていたはずだが、あえて何も言わなかった。舌と指で周囲を解すようにマッサージしながら、徐々に体内の奥深くへと指を進ませていく。
「ッう……」
指に犯される痛みと、それに伴う異物感で気が遠くなる。
「随分固いねえ……。それじゃもっと力抜かなきゃ入らないよ」
無理だ、というふうに手塚は首を横に振った。
「じゃないとすぐに終わらないけど?」
それならもう止めろ、と言いたかったが前を押さえつけられていて上手く言葉が紡げなかった。喘ぎ声を出さないように口を塞いだまま首を振るしか出来なかった。
「仕方ないね。じゃ、ちゃんとほぐしてあげてからね」
ゆっくりと指が内部で動かされる。やがてその指が内のコリコリしたところを探りあてると、背筋を稲妻に似た快感が駆け上っていく。
「ふぅっ……!」
前立腺を刺激され、体の奥から下肢に与えられる刺激に目が眩む。だが、根元は未だ不二の指で解放を阻まれている。鎌首をもたげたそれは震えながら解放を待ち望んでいたが、不二は許さなかった。中から与えられる快楽と前を締め付けられる痛みとが渾然一体となって手塚を襲う。
何度も抜き差しされるうちに、気がつけば指の本数は二本、そして三本へと増やされていった。壁を押し広げるようにゆっくり動く指の圧迫感が腰に隠微な感覚をもたらす。内部で指を捻られるたびに、赤くなった粘膜が捩られるが、それも既に痛みだか快楽だか判断できなくなってきた。相変わらずさっきから射精を抑えられているせいで、思考が上手くいかないのだ。
「……もう、大丈夫かな」
不二はそう言うと手塚の内部から指を引き抜いた。内臓までそのまま引き抜かれるような感触に喉の奥から声が漏れた。
「……ひっ……」
その声に反応した不二は、身体を起こした。
「……もう辛い?」
浴衣の裾から覗く手塚の震えた脚を、不二は宥めるようにそっと優しく右手で掴んだ。膝の裏のくぼんだ部分に舌を這わせる。
「だいぶ汗、かいてるね。もうイきたい?」
不二の言う通りだが、正直に答える事はプライドが許さなかった。不二もそんな手塚の態度をわかっていてか、手塚自身を縛り付ける左手を少し強める。反り返るだけ反り返り、あと少しで絶頂に達するそれは、全身をびくんびくんと大きく震わせた。
「あ……っ」
「でも、こうやって引き止めておかないと、君、一人でいっちゃうでしょう?」
言葉のニュアンスを微妙に変えて、不二は言った。
だが、手塚は答えるだけの余裕を失っていた。
「今だけ、で、いいからさ……」
顔を隠している手塚の手をどけて、鼻の頭にキスをしながら、不二は囁いた。
「……一緒に居てよ、ね」
手塚はその言葉を理解してかしないでか、ただ、一度だけ、ゆっくりと首を縦に振った。
ようやく前を締め付けていた指が外されたのもつかの間、安心する間もなく手塚は再び足を開かされた。不二は自由になった両手で手塚の腰を軽く浮かせた。乱れた浴衣の前から自分の分身を出すと、それを先ほどまで指で嬲っていた秘所にあてがった。そのまま少しずつ先端を埋めていく。焼けるような痛みが全身に走るが、なんとか大きな声は出さずに耐え切った。
「く……っ」
軽く抽送を繰り返しながら、熱い塊が指ではたどり着けない奥まで入り込んでくる。内臓を圧迫する熱と大きさに息が詰まる。
「きついね、中……」
入りやすくするために手塚の片脚を抱え上げ、より深くへと不二は腰を進めた。手塚は無理やり脚を開かされている事も既に気にならなくなっていた。全身が夏の夜の暑さと身体の熱さでどろどろになっている。意識さえもこのまま溶けてしまいそうな。
やがて根元近くまで手塚の内部に自身を埋めた不二は、手塚の腰をさらに更に引き寄せた。
「ひっ……」
「……腕、こっちにもってきて」
不二はそう言うとだらりと垂れ下がった手塚の両腕を自分の肩に回させた。そしてぎゅっと抱きつかせる。体が密着する事で内部を突くものの位置も変わり、熱い吐息がお互いの喉から零れた。
「動くよ、いい?」
その問い掛けに手塚が答える前に、不二は腰を動かしはじめていた。
絡みつく内壁を引きずりながら出て行ったかと思うと、すぐに同じ熱さで奥まで捩じ込まれる。それを何度も何度も繰り返される。
まだ一度も達していない手塚の前を不二は右手で包むと、親指の爪先を透明な液体が溢れる穴に捩りこんだ。前への刺激のせいでぐっと内部の筋肉を締め付けてしまう。そのタイミングに合わせて内を埋め尽くす物体がずるりと引き出されていく。
前を嬲る指と、後ろを突き上げる腰の動きを上手く合わせながら、不二はお互いを高めていった。
「も……っ……ふ、じ……」
泣き出しそうな声で哀願する手塚の髪を、不二は優しく撫でた。
「うん……」
不二は少し目を細めると、今まで以上に勢いよく手塚の深くまで自身を差し入れた。
その衝撃で手塚の前が弾けたのと同時に、不二も手塚の中に精を放っていた。
☆★☆★☆
とりあえず持参のタオルで全身を拭い、こざっぱりした上で浴衣を着付けなおした。
「……浴衣、どうするんだ」
「あーえーとごめんうんクリーニング代は出すからさ」
「全て金で片付けようとするな」
「でも外でするのってスリルあるよねー。もう病みつきになりそう」
妙に嬉しそうな不二に手塚はげんなりした。
「頼むから……止めてくれ」
川辺に腰掛けながら、手塚は不愉快極まりなかった。それもそうだろう。清潔好きの彼がこんな場所で身体を開かされたのだ。
だが、問題の加害者は、ちゃっかり手塚の膝の上に座り込んでいる。不二が無理強いしたのだ。体格的には問題ないが、これではどっちがどっちだったのか解ったものではない、と手塚はふとそう思った。
この体勢だとちょうど不二の頭が顔の前に来る。一運動した後でもさらさらでふわりと柑橘系の香りのする不二の髪に、胸の鼓動が早くなる。
慌てて話題を逸らそうと、横を向いたまま不二に問いかけた。
「どうして、……この体勢なんだ?」
不二は手の中で弄んでいた石ころを川の中に投げた。
石ころは何処とも知れず落ちて、ぽちゃんと水音を立てた。
「……君の背中、あんまり見たくないんだよね」
「………………」
二人の間に沈黙が訪れる。しばらく川の流れと上を通る車の音だけが響いたあと、不二がおもむろに口を開いた。
「ごめんね。我慢するつもりだったんだけど今日は」
「……不二?」
はあ、と溜息をつくと不二は、手塚の方を振り向いた。
「だってどうせ、すぐに戻るんだろう? 宮崎に。またすぐに会えなくなるぐらいなら下手に触ったり期待したりしない方がいいかなーって……そう思ってたのに、浴衣なんか着てるんだもん君」
「あのな」
だからなんでそこで浴衣が出てくるのだ。
それはまた話すと長くなりそうだったので、手塚はもう一つの問題点に突っ込んでおいた。
「病院に『戻る』んじゃない……『戻る』のはこっちだ。青学に戻ってくるんだ」
「…………」
不二は何も言わなかった。
「ちゃんと戻ってくる」
そんな不二を安心させるように、手塚は不二の頭を抱きかかえてそう言った。
「……うん」
目を閉じながら、不二は首を縦に振った。
「それに……そんなに会いたいなら、夏休みのうちに、宮崎に来ればいい」
手塚が何気なくそう言った一言に、不二は瞳を輝かせた。
「ほんと!? 行っていいの!?」
「あ、ああ……向こうは向こうでなかなかいい所だし……」
「なら夏休みだから君が行く時にでも付いて行くよ!? というかもう夏休み中ずっとそっちにいるよ!? じゃあ宿の手配しなきゃね……」
と、携帯を取り出してどこかに電話を始める不二を見て、手塚は自分の迂闊な一言に気がついた。
「あのな、ちょっと待てお前。夏の練習はどうするんだ!?」
「君のリハビリに付き合うって言えば皆許してくれるよー」
許しを請うのではなく脅しているのじゃないのかそれは、と手塚は言いたかった。
これのネタ仕入れにB湖花火大会見に行って
友人と浴衣メンズの品評会状態になっていたことは言わぬが花、ってことで。
何言ってるのかよく解らなくなってきましたが10000ヒット記念でした。アンケートお答えくださった皆様ありがとです。
もっと凝ったもの書きたかったんですが……エロ神様が降臨しなくてなんかただ長いだけのお話に……うううう精進します。
*補足。
日程なんかは「SWEAT&TEARS」参照のこと。
全国ほんとに九月なのかな。だったら手塚帰ってくるかな……
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