全身の泡を洗い流し、二人は湯舟に戻ってきた。
だが、当然のごとく続きを求める不二と、流される手塚なのだった。
「もう……止めるんじゃ……ないのかっ!」
噛みつくようなディープキスの合間を縫って、息も絶え絶えに発した手塚の主張を、不二はあっさりとうち砕いた。
「あれ? 誰が終わりって言った?」
言われてみれば確かにその通りなのだが、露天風呂の中で行為に及ぶとは思わなかった……というか、信じたくなかった手塚だ。公共の場所だし、痕跡を水で流せる洗い場とは違う。だいたい、入り口からすぐに目には付かない岩場とはいえ、ここだっていつ人に見られるか解ったものではないのだ。常識として信じられない。
不二は無理やり手塚の膝を割り、身体を足の間に割りこませてくる。
「だいたい一人だけ気持ちよくなっておいて、止めるなんてひどいんじゃない?」
「……この中じゃ……お湯を、汚す……」
「僕は君の中で出させてもらうから大丈夫なんだけどね」
そういう問題じゃない、と手塚は反論しようとした。だが手塚が口を開く前に、不二が指を湯の中で大きく開かれた股の間に忍ばせた。すぐにひくついている穴を探り当てる。
「ここも、もうその気みたいだしね」
「……んっ!」
不二の指が一本、中へと潜りこんだ。同時に湯も内部に入ってくる。内壁で直接感じさせられた湯の熱に手塚は身をよじった。
「!…………やめっ……あつっ……!」
「ああ、熱いの?」
「……ひっ……くう……」
不二はお湯を内部により多く含ませるように指を動かしながら出し入れした。指の刺激とお湯の刺激の二つの攻め苦にさいなまれる。思わず喉から漏れだそうとする声を抑えるために、手塚は左手を口元にもっていった。そのまま人指し指を口に含み、噛む事で声を殺そうとする。その動きを不二は見逃さなかった。
「駄目だよ。指を傷つけちゃ」
不二は手塚の左手を無理やり口から外すと、噛んで赤くなった指をいたわるように舐めた。
「……声、そんなに出したくないの? 誰が来るか解らないもんね」
納得したように首を縦に振ると、岩に掛けてあったタオルを手に取った。そして目にも止まらぬ早業で手塚の口を塞ぎ端を頭の後ろでむすんだ。いきなりの行動に手塚は目を見開いた。これで確かに声は漏れなくなった……だが、余計に人に見られると困る格好となってしまった。
これ以上流されまい、と、なんとか身体をひねって逃れようとするが、次は一度に二本、指を突き入れられた。固い入り口をこじあけるように二本の指が動く。当然中に入ってくるお湯の量も増えることになる。指はやがて内部から前立腺を集中的に攻め始めた。
「ここがイイんだよね、手塚は」
猿轡からくくもぐった声が漏れ聞こえる。内からダイレクトに伝わってくる快感で身体がはねる。その際に響いた水音が辺りに予想以上に大きく響いた。
不二がたしなめるように言う。
「あんまり動いてばしゃばしゃ音立てると、外まで聞こえちゃうかもしれないよ?」
「!!」
「我慢出来ないなら、ほら、僕の首に両腕をまわして……」
あまりの刺激のせいで既に自分の身体を支えきれなくなっている手塚だった。言われるままに不二の首に両手をまわし、しがみつくような格好になって身体を安定させた。不二の肩に顎を載せて首を支える。
「……ふうっ……んん……」
湯の熱さに感覚が麻痺したころには、内部が熱で解けきったような感じがした。何時の間にか指も三本に増やされ、肉の壁をかきまわすようにうごめいている。だが痛みはもう無い。代わりにどうしようもない快感が下半身を支配している。現にもう、前も立ち上がり始めている。
「そろそろ、指じゃ足りなくなってきたんじゃない?」
不二の問いを手塚は首を横に振って否定した。その答えに、不二は急に指を引き抜いた。今までの愛撫のせいで弛緩しきった入り口を撫でながらつぶやく。
「こっちのお口は正直だよ……ほら、ひくひく言ってる。もっと欲しいっておねだりしてる」
「くっ……ううんっ……」
内部に手ひどく与えられる刺激に慣らされたためか、触るだけのソフトな愛撫では自分でもどうしようもないもどかしさが増すばかりだ。自分の意志に反して、指を誘いこむように開閉している穴の様子は手塚自身にも解っていた。解っていたからこそ……否定せずにはいられなかった。目もとを潤ませながら、首を横に振り続ける。
「欲しいんでしょ? 今、あげるからね」
不二は手で手塚の腰を軽く持ち上げ、自分の側に引き寄せた。股関節を開けるだけ開かせて、自分の下半身を近づける。手塚の痴態で既に怒張していた自らのモノをひくつく穴にあてがうと、一気に行けるだけ奥まで貫いた。痛みはほとんどなかった。だが、望んでいたとはいえ、あまりにも唐突な挿入に手塚の内部が震える。肉をえぐり巻きこみながら突き上げてくる。指とは比べものにならない激しい刺激に、不二の華奢な肩に爪を立てて耐えた。
「う……ううっん! ふうっ!!」
「ああいつもより中が熱いね……お湯のせい? それとも感じてるから?」
じょじょに奥へ奥へと、不二は進んでいった。やがて根元まで手塚の中に埋め込んで、そこで一端動きを止めた。お湯を含まされいつもより熱を増した手塚の肉壁を楽しむように、中に留まるだけで動くような事はしなかった。指では届かない、手塚の深い所まで不二自身が潜り込んでいる。内部でますます太さを増す様子や、熱を帯びてどくどくと波打つ脈の様子が直に感じられる。そのなまなましさに、顔が赤くなる。不二にしがみついている腕にいっそう力が込められた。
「んんっ……!」
「凄いね……解る? 手塚のココ、ぎゅうぎゅう締めつけてきてるよ……そんなに待ってたの?」
「ふっ……くぅっ……ん!」
耳に注ぎこまれる、少し熱を帯びた不二の声も、手塚にはもう遠いもののように聞こえていた。
●
ちょうど、その時の事だった。
露天風呂の出入り口のガラス戸が開く音が聞こえた。誰かが入ってきたのだ。ここから目で確認することは出来ないが、足音から考えると、二人ぐらいだろう。
「……!?」
それまで快楽に耐えるように閉じてられていた手塚の瞳がはっと開かれた。熱に浮かされていた意識が急に回復する。そう、ここは露天風呂だったのだ。
だが不二は全く慌てなかった。体勢を変えず、手塚の中に入ったまま言う。
「誰か来たみたいだね」
露天風呂に来た二人組みは何か話しているようだった。
「……桃先輩、ホントに大丈夫なんすか?」
「いーっていーって。気にすんな。それにお前、温泉好きだろ?」
「まあ……」
「ここ夜中の方が人も空いてて楽しめるんだよ、星も綺麗だしな」
「……そーみたいッスね」
耳をすまして聞いていた手塚はぎょっとした。今の声、会話……間違い無く、桃城と越前だ。どうやら手塚と同じ事を考えていたらしい。
「……桃と越前みたいだね。困ったな」
「!! んんんっ……! ううっ!」
言葉の割に全く困っていなさそうな不二とは対照的に、手塚は焦った。今の状態を見られるわけにはいかない。せめていい加減抜け、と、手塚は小声で不二にそう注意しようとする。だが、はめられた即席猿轡が邪魔をする。声が伝わらないとなると次は行動で示すしかない。力の抜けた腕をそれでもなんとか突っ張って不二から離れようとする。
しかし不二がその要求を聞くはずもなかった。手塚の腰に両腕をまわして抱きしめ一端離れかけた腰を再び密着させると、耳元に囁きかける。
「そんなに暴れると水音で気付かれるよ、手塚。ま、声さえださなきゃばれないだろうし、多分」
「んん……っ」
岩を挟んでいるため直接は見えないとはいえ、同じ露天風呂に入っているのだ。ほんのわずかな音でも気付かれる可能性がある。手塚は身を固くした。声も動きも抑えねばならない。だが未だ内部に留まりつづけている異物の感覚は、意識しまいとすればするほど気になってしまう。内部の壁とぴったりとくっついている状態のため、その変化もくっきり感じられる。その事を考える度身体が熱くなる。何かにすがりつき少しでも楽な体勢を取ろうとすると、再び不二の肩にしがみつく事になった。
幸いな事に、越前達は露天風呂の奥までは来ないようだ。
「いやー、なんか貸し切りみたいで気分いいよな〜」
「……でも、他にも客いるはずッスよ」
「え……、そうなのか?」
「脱衣所に服が、しかも二着。隣どうしの棚使ってるって事は、多分友人か親子じゃ」
「へぇ……なーんだ、つまんねーの」
この会話に手塚の身が更に固まったのは言うまでもない。汗ばんでいた額に、別の汗が浮かぶ。
「……さすが越前、しっかりしてるや」
不二は妙な事で感心している。手塚は、まさか誰だか解ったとか、誰か確かめてみよう、なんて事になるのではないか、と、気が気ではない。
「ま、夜中の事知ってる奴なんて、多分常連客だろーな」
「案外うちの誰かとか」
「まさか。下手に規則破ると部長が怖いぞ〜。去年だって……」
「……先輩、オレ達の事棚にあげてません?」
「気にすんなって」
それでこの話題は終わりだった。手塚は内心胸を撫で下ろした。その後はたわいない会話だけが続いている。二人が出て行くまでこのままおとなしく待つしかなさそうだ。
だが不意に、湯の中で手塚の腰を抑えていた不二の手が、おもむろに下へと降り双球を撫でると、割れ目を伝ってさらに奥へと忍びこんだ。そして不二自身を飲み込んでぎりぎりまで広がっているその部分に触れた。いきなりの行動に驚き、うめき声をあげかけた手塚だったが、身を震わせてなんとか耐えた。今、少しでも声をあげるわけにはいかない。抗議の言葉の代わりに不二を睨みつけた。しかし指の動きは止まらない。張りつめた肉と肉の隙間に無理やり潜りこんで来る。
「……っ!」
不二を受けいれる、ただそれだけできついのに、これ以上指など入れられてはたまらない。ソコが裂けるような痛みに襲われ、しがみつく指に力を込める。逃げようと腰を引こうとするが、下手に動くと音で向こうに気付かれる。それだけはどうしても避けたい。そう思うと、ここは何をされても我慢するしかなかった。
第一関節まで内部に潜りこんだ指は、そのまま軽く抜き差しされる。今までに比べるとほんのわずかなものだ。痛みはすぐに和らいだ。また、驚きのあまり一度こわばってしまった肉壁も、再びほぐされていく。
そうなると、今度は動けないこの状況がもどかしくなる。それだけの刺激じゃ足りなくなってくる。身体はじれて自分から動き出したがるが、手塚はその衝動に頑として抵抗した。身体を時折ぴくりと震えさせながら、それでも快楽に流されることに必死の思いで耐えた。
何分たったか……実際は1分もたっていないのかもしれないが、だが手塚にとっては永遠のように思われた時間の最中、再び出入り口の引き戸が開けられる音がした。
「お客さん方、そろそろここ閉めますので……」
露天風呂内に響き渡る大声で叫んでいるのは旅館の人間らしい。もうそんな時間になるのか。
「えっ、あっはい。んじゃもう出るか越前」
「そーっすね」
「すみませんねえ」
ざぶり、と、二人がお湯から上がる音がする。そのまま塗れた足音が聞こえる。どうも露天風呂から出ていったようだ。なんとかこの危機をのりきった。手塚は快楽に犯され朦朧とした頭で、ぼんやりそう考えた。
「もう時間なんだね。じゃ、1回終わりにしよっか」
「!?」
そう言うと、不二は手塚の腰を抱え上げ突然上下に揺すり出した。
「んっ!」
一度入り口近くまで引きぬいて、再び押し入れる。それを何度も繰り返す。中で肉と肉がこすれあう感触がダイレクトに伝わってくる。お湯を注がれいつもより丹念にほぐされた壁は、この慣れてしまった激しい刺激を今まで待ち望んでいた。だが、歓喜をもって不二を受け入れる身体に比べ、急な追い上げに手塚の意識が付いていかない。
「ふっ……んうっ……ううんっ!」
「どう? イイ? ねえ、手塚」
問われるまま、正直にがくがくと首を振って答える。その答えに満足したように不二は微笑み、動きをやや軽くすると、片手を手塚の股間にのばした。
「じゃあ、もっと良くしてあげる」
手が質量を増していた前に添えられる。すでにこれまでの刺激で痛いほど張りつめていたそれは、触られただけでも思った以上に反応した。
「……くっ!」
最後の理性がそこで手塚を止めた。今、自分たちがいるのは温泉の中だと言う事実だ。温泉を汚すような事態はなんとしても避けたい手塚としては、今ここで射精するわけにはいかない。歯をくいしばり、全身を震わせて必死で湧きあがる衝動を抑える。
「……何? そろそろイキそう?」
そんな手塚の様子を見て、不二は悟った。
「ああ……お湯の中で出すのは嫌なんだね」
首を縦に振って肯定する。不二もそろそろ吐く息が荒い。限界が近いらしい。
「じゃあ、先を僕が手で包んでてあげるから……一緒にイこうね」
「んうー!?」
そう言うと、不二は手塚に反論の隙を与えず、二、三度棹の部分を手で上下にしごいた。それだけで手塚の背がえびのように反りかえる。脊髄を駆け抜け全身にその快感が広がる。びくびく痙攣する先端をぎゅっと手で握った。
「……ん……んぅ、んんっ!!」
「……手塚……っ」
一度火がついた身体は燃えたてられるのも早かった。不二の手の中であっけなく手塚は果てた。その瞬間、不二も再奥まで付き入れ、ひときわきつく締めつけられてほぼ同時に手塚の内部に放出したのだった。
放たれた精液と、内から抜かれていく性器の感覚を、手塚はどこか遠くで感じていた。口に巻かれていたタオルも、不二の手によって外される。唾液で塗れた口元には、タオルの後がくっきりとついていた。
射精後の解放感と疲労感に満たされている手塚の口元に、不二の手が寄せられた。掌には、多少のお湯と混じった、つい先程自分が放った白い液体が付いてある。
「……自分で舐めてキレイにしてね」
釈然としないものの、ぼんやりとした意識のもと、手塚は言われるがままに不二の手に舌を這わせた。独特の香りが硫黄の臭いと混じっている液体を、舌で一滴残らずキレイに舐め尽くす。こくり、と喉がそれをえんかしたのを確かめてから、不二はそっと手塚の頬に手を寄せた。汗とお湯で額に張りついた手塚の前髪を上げてやる。
そのまま顔を寄せ、口にキスをする。唇を味わい、タオルの跡が付いてしまっている部分を癒すようにしながら舌でたどる。
手塚はうつろな瞳で不二を見た。
口が一度離れた隙に手塚は何か言おうとしたが、その言葉を封じこむように、再び、唇が重ねられた。
深いキスが終わったあと、不二はすぐに立ち上がり、手塚に背を向けた。
「もう閉まるってさ。そろそろ出よう。もちろんこの事は二人だけの秘密だよ」
あ、それと、と、振り向いた顔は、いつもの不二のものだった。
「ここ、汚したくないんでしょ? 僕のもこぼさないようにね」
言われて、はっと気付いてた手塚は、思わず弛緩しきっていた後ろに力を込めた。不二はそのまま露天風呂から出ていく。
首までお湯につかりながら、手塚は不二の後ろ姿を書赤い顔で睨みつけた。
そうする事しか出来なかった。
完?
なんで私の書く不二はこんなに変態なんだろう……(そりゃ私が変態だから仕方ないが)
やり過ぎたのかそれとも序の口なのか。何にせよ俺にとっては初エロ……嘘です、昔別ジャンルで書きました。
最後ちょこっとラブで嫌な感じです(砂吐)。
しかしエロは深夜しか書けませぬ……恥ずかし過ぎ。すまん(逃)。
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