〜庭球王子的御伽草子劇場〜
あかずきんちゃん

キャスト
あかずきん:越前リョーマ
狼:不二周助
おばあさん:手塚国光
おかあさん:大石秀一郎
狩人:桃城武
……+α

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 むかーし、むかーし、あるところに、皆からあかずきんと呼ばれている、それはそれは可愛らしい女の子がいました。

「……ありがちだね」
 ……ほっといてください。

 女の子はいつもおばあさんからもらった赤色のずきんをかぶっていました。このことが、女の子が「あかずきん」という名で呼ばれる理由でした。
 あかずきんは森の奥に一人で住んでいるおばあさんの事が大好きでした。そして無愛想で気難しくて周りから恐がられる事の多いおばあさんも、あかずきんのことは割と気に入っているようでした。

 ある日、あかずきんはおかあさんからお使いを頼まれました。白い割烹着と三角巾がこの上なく似合うおかあさんはあかずきんにワインとパンと湿布薬の入ったバスケットを渡しました。おばあさんは左肩を痛めてしまっているのです。
「『あかずきん、これを森のおばあさんのところへ届けてくれないかい?』」
 おかあさんはぎこちない言葉遣いであかずきんにそう言いました。顔が微妙に引きつってます。
「……副部長、演技下手ッスね……」
「そう言うなよ越前……割烹着ってなあ……」
「俺だって女装ッスよ」
「というか……あかずきんで割烹着のおかあさんってどうなんだ?」

 そこ、あんまり私語をしないように。
 なんだかもう世界観なんてどうでもいいんです。

 とにかく。
 あかずきんはお使いを快く引き受けると、おばあさんのうちへと出発しました。
「『道草はしないようにね〜』」
「解ってるッス」
 おかあさんの見送りにあかずきんは素で返事しました。どうやら全く演技をしようという気が無いようです。

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 森の中のおばあさんの家までは徒歩で一時間程度かかります。あかずきんは途中の自動販売機で買ったファンタ(グレープ味)片手に小道をぶらぶらと歩いていました。

 とても天気の良い日でした。木々の間からは木漏れ日が差し込み、穏やかな光が辺りを包んでいます。すぐ近くの木から小鳥の囀る声が聞こえ、脇の繁みからはがさごそと小動物の動く音がしています。
 ですが、あかずきんは寄り道せずにまっすぐおばあさんの家に向かっていました。おかあさんにそう言われたから、ということもありますが、おばあさんに早く会いたい、と言う気持ちが強かったのです。

 道中を半分ぐらい来たところで、小道は小川に沿うようになりました。川には魚が撥ね、岸には色とりどりの花が咲き乱れています。
 それでもあかずきんはお花には目もくれずに歩きつづけました。

 そんなあかずきんの目の前に、何者かが道を塞ぐように飛び出しました。
 その何者かは、顔に仏様のような笑顔を浮かべてあかずきんに声をかけてきました。
「やあ、こんにちは。あかずきん」
 森に住むおおかみでした。あかずきんはおおかみの表情を見て背筋に悪寒を感じました。
 数歩後ろずさりながらあいさつを返します。
「……ちわッス」
「嫌だなあ、どうしてそんなに恐がるのさ」
 おおかみは満面の笑みを浮かべていました。あかずきんは目を合わさないようにしながらおおかみの横を通り抜けようとしました。
 ですが、おおかみはあかずきんが横を抜けるのを許しませんでした。身体でブロックしてきました。
 それを何回か繰り返した後、あかずきんはしぶしぶおおかみに事情を話しました。

「どいてください、そこ。急いでるんです」
「知ってるよ。おばあさんのところに行くんだろう?」
 どうしておおかみがその事を知っているのでしょうか。まあこのおおかみならそれぐらい簡単だという気もしないでもありません。

「解ってるなら通させてくださいよ」
「そんなに急がなくてもいいじゃないか、ねえあかずきん」
「邪魔っす」
「まあ待ちなよ。おばあさんのところに行くのなら、お土産が必要じゃないかい?」
「……でも寄り道するなって、副部長が……」
「大石は固いからね、でもちょっとぐらい寄り道したってばれないよ」

 大石じゃなくて「おかあさん」と呼んでください、おおかみさん。

「ここの綺麗な花を摘んで行くというのはどうだい? おばあさんもきっと喜ぶよ」
「……あの人、そんなもんで喜ぶんッスか」

 あかずきんは脳裏に「花を受け取って微笑むおばあさん」を想像しようとしましたが、気持ち悪い画像が浮かんだのでやめました。

「アウトドア派だからね。自然は結構好きな方だよ。だからきっと喜んでくれるよ」
「……でも」
「じゃあ小川でウナギを取ってあげるのはどうだい? おばあさんはうな茶が大好物だろう?」
「……ウナギなんているんスかあの川」
「ウナギだってブルーギルだってビワコオオナマズだっているさ」

 ……いません。
 地元ネタですみません。

 ですがあかずきんは、おおかみの口八丁に上手く騙されてしまいました。おばあさんの大好物のうな茶を作ってあげればきっと喜んでくれるだろうと思いました。

 ブーツを脱いで川に入るあかずきんを尻目に、おおかみはこっそりと森の奥へと向かいました……。

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 一方、その頃。
 森の中では、おばあさんが自室で一人、エプロン姿でリハビリに励んでいました。
「83、84、85……」
 あばあさんは少し前、痛めた肘を庇って長時間のプレイを続けたせいで左肩を壊してしまいました。そのためのリハビリでした。
「98、99、100……ふう」
 ヒンズースクワット100回を終えて、おばあさんはベッドに腰掛けました。

 玄関のベルが鳴ったのは、ちょうどその時でした。
 おばあさんはおかあさんからメールであかずきんが向かっている事を聞いていました。だからてっきりあかずきんがきたものだとばかり考えていました。
「……『おや、あかずきんかい?』」
 おばあさんは必至に声色を整えながらそう言うと、玄関のドアを開けました。
 ですが、ドアの向こうにいたのは、おなかを抱えて笑いをこらえているおおかみでした。
「く、くくっ……て、手塚、声マネ下手だね……」
「……わ、笑うんじゃない!!」
 おばあさんも思わず素が出ました。

「あはは、面白かった……じゃ、続けようか」
「……」
 おばあさんは仏頂面をますますしかめました。

「こんにちは、おばあさん」
「……帰れ」
 おばあさんはおおかみに思いっきり笑われて、すっかり演技をする気をなくしたようです。
「そういうわけにもいかないでしょ? 君はこれから、僕に食べられるんだから」
「……」

 おおかみの言い方は妙な意味を含んだものでした。おばあさんは本能でヤバイものを感じましたが、与えられた役割を途中で投げ出すような事は出来ない性格でした。

「そういう役だから、仕方ないよね」
「……それは、そうだが……」

 おおかみはおばあさんの手を取ると、ベッドに引きずっていきました。
 そしておばあさんを仰向けに横にすると、上から覆い被さりました。そのあと服を一枚一枚脱がしにかかりました。

 さすがに鈍感大王のおばあさんも、いい加減に何かおかしい事に気付きました。

「ま、待て、お前……な……」
 ですが、据え膳を逃すようなおおかみではありませんでした。
「……じゃあ、いただきまーす」
 おおかみは大きな口をあけると、おばあさんの身体に喰らいつきました。

 ……暗転。

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 ……さて、ウナギを取りに川に入ったあかずきんでしたが、結局ウナギは見つからないまま川から上がりました。
「……畜生」
 おおかみにだまされてとんだタイムロスをしてしまいました。
 あかずきんは身なりを整え直すと、走っておばあさんの家へと向かいました。

 一方、おばあさんの家では、おおかみがおばあさんを美味しく頂いてしまっていました。
「……ご馳走様でした」
 おおかみはおばあさんの足の間に身体を割り込ませたまま、そう言いました。
「……っ……」
 おおかみはおばあさんの中から自身を抜くと、意識の飛んでいるおばあさんの額にキスをしました。
「おいしかったよ」

 ちょうど、その時でした。
 玄関のドアが勢いよく開けられる音が寝室にまで響いたのは。
「お、遅れてスミマセン……!!」
 走ってきたあかずきんがようやく到着したのです。
「……!?」
 あかずきんの声を聞いて、おばあさんも意識を取り戻しました。
「ちっ……」
 おおかみは思いがけない邪魔に舌打ちをしました。
「……部長、いるんスか?」
 あかずきんは玄関におばあさんがいないことをいぶかしんでいるようです。家中を歩き回りおばあさんを探す足音が響いています。
 やがて、その足音は寝室の前でピタリと止まりました。

「部長、ここッスか」
 あかずきんの声に、おばあさんの顔は青くなりました。この状況を見られる訳にはさすがに行きません。ですがドアに鍵はかけていません。あかずきんは入ろうと思えばいつでも入ることができるでしょう。
「……寝てるんスか」
 そう言うと、ドアノブを回す音が聞こえました。
 おばあさんは慌てて自分の足の間にいるおおかみにかけぶとんをかけました。これで不自然ながら、パッと見にはおばあさん一人しか寝ていないように見えます。
「……いいじゃん。見せ付けてやろうよ」
 布団の中から小声で囁くおおかみに、おばあさんは息も絶え絶えに返事しました。
「だ、黙ってろ……!」
「……部長?」
 そうこうしているうちに、ドアが開いて、あかずきんが寝室に入ってきました。

 おばあさんは後頭部をあかずきんの方に向けて横になっていました。
「……どうしたんすか、部長」
「え、越前……」
 そう返事したおばあさんの声は、枯れていてとても辛そうでした。
「その声、大丈夫ッスか」
「あ、ああ……」

 よく見れば、おばあさんは耳まで赤くなっていました。
「どうしたんすか、その耳」
「お、お前に会うかと思うと……」

 額には汗をかいているようです。髪の毛もいくらか乱れています。
「どうしたんすか、その顔」
「……ちょ、ちょっとな……」

 そして何よりも不自然なのは、布団が妙に盛り上がっている事でした。
「……どうしたんすか、そのお腹……」
「そ、それは……」

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 時間は少し遡りますが。
 おばあさんがおおかみと出会ったころ、楽屋裏では狩人役の桃城が着替えを終えていました。
「……うっし、完璧!」
 鏡の前で服装をチェックします。どこからどう見てもばっちり狩人です。おおかみに食べられてしまったあかずきんを助ける重要な役目です。
 裏方の菊丸が呼びに来ました。
「桃ー! ぼちぼち舞台袖に来ないとヤバイぞー!」
「あ、へーい」
「……不二が暴走してるからなー、気をつけとけよ」
「……わ、わかったッス」
 桃城は冷や汗を垂らしました。とは言うものの、不二の狙いが手塚であることは一目瞭然です。とりあえず越前だけはなんとか助けなければな、と決意を固め直しました。……手塚の存在はどうでもいいようです。管理人、実は桃リョ推奨です。
 そのとき、後ろにスッと何者かの人影が現れました。
「ん?」
 気配に気付いた桃城は条件反射的に後ろを振り向きました。

 そこにいたのは……
「う……うわあああぁぁ!!!」
 桃城の叫び声は、楽屋裏の奥に吸い込まれていきました。

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 さて、あかずきん本編に戻ります。
「……部長、大丈夫ッスか」
「す、すまない……今日は、もう戻ってくれないか……」
 おばあさんは苦しい息でそう言いました。
「こんな状態の部長ほっていけませんよ」
「……気遣いは、ありがたいが……っう」
 突然、おばあさんのからだがびくんと大きく撥ねました。
「部長!?」
「い、いや、……大丈夫だっ……」
 たいくつになってきたおおかみが、布団の中でおばあさんの身体になんらかのいたずらを加えたのです。
 おばあさんにできる事はあかずきんに気付かれないようそれに耐える事だけでした。
「全然大丈夫じゃ無さそうっすよ!」
 あかずきんが寄ってきたので、おばあさんは思わず静止の声をあげました。
「ち、近づくな……!」
「……部長?」
 あかずきんは首を傾げました。おばあさんがいったいどうして自分を拒むのかわからなかったからです。
 ですが、よっぽどのことがあるのだろうと思って、あかずきんは寝室のドアの前まで戻りました。

 そのとき、突然寝室のドアが開きました。
「!?」
 予定外だったのであかずきんは驚きました。
 ドアの前にいたのは、狩人の格好をした男でした。
「……桃先輩?」
 あかずきんは最初、その男が狩人役の桃城だと思いました。ですが見上げると、桃城よりももっと背の高い男でした。ヘアバンドとサングラスと無精髭をまとった、あかずきんの見たことの無い狩人でした。
 あかずきんはそのいかにも不審者な外見をした狩人をこれ以上はないほど怪しげに睨みました。
「誰ッスかあんた」
「……おばあさんを助けに来た者ですよ」
「……はあ?」

 当のおばあさんは、ベッドの上で耳まで真っ赤にして固まっていました。
「……や……大和……部長……」
「ご無沙汰してますね、手塚君」
 狩人はおばあさんにそう言って微笑みかけました。
 おばあさんは空中に投げ出された魚のように口をパクパクさせ、何も言えなくなっていました。
 一体何が起こってるのか、おばあさんの理解の範疇を越えていたのです。

 どうして狩人がこの場面で出てくるのか、それがどうして桃城ではなく大和部長なのか。

「あ、あ……の…………これは、その……」
「ああ、何も言わなくても解ってますよ。お話どおり僕は君を助けに来たんです」
「……な、何……」
「おおかみに食べられたおばあさんを助けて、おおかみをこらしめるために……」

「……何を言ってるんですか、『元』部長」
 突然、おばあさんのベッドの掛け布団が吹き飛びました。その中から第二ラウンド突入を邪魔されまくって機嫌の悪いおおかみが現れました。
「……ふ、不二先輩!?」
 あかずきんはおばあさんに何があったのか瞬時に悟りました。
「あんた、食べるって……何て事してるんすか!」
 ですが、あかずきんの抗議には目もくれず、おおかみは狩人を睨みつけていました。おおかみにとってこのサングラスの狩人は天敵も天敵、ハブとマングースのようなものでした。というか一方的におおかみが狩人を嫌っているだけですが。

「おばあさんを食べちゃったおおかみがどうなるのか、知ってますよねえ?」
「……そう簡単にいくと思ってるんですか」
「あはは、お腹を裂いたりはしませんけどね」

 じりじりと迫ってくる狩人に対し、おおかみはベッドの上で身構えました。

 主役のはずのあかずきんは謎の狩人とおおかみの眼光鋭い争いを、呆気にとられながら見ていました。
 ふと、狩人があかずきんに声をかけてきました。
「……どうですか? 君もおおかみ退治に参加しませんか?」
 おおかみと狩人の間に何か怖いものを感じたあかずきんですが、ここで引くのは躊躇われました。何せ大切なおばあさんの貞操が懸かっているのです。……既におおかみによって奪われていますけど。
「の……望むところッスよ」

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 撮影係の乾は、ビデオを回しながら隣に座っている菊丸に話し掛けました。
「いったい……誰があの人を呼んだんだ?」
 あの人とはこの場合、乱入した偽狩人に他なりません。
「んー……でもあの人、こーゆー馬鹿イベント、呼ばれなくても嗅ぎ付けて来そうだけどにゃー」
「まあ……確かに」
 一年生の時に、元部長の奇人変人っぷりを目の当たりにしていた二人はうんうんと深く肯きました。
「うわー手塚かわいそー。固まっちゃってるよー」
「いや……映像としてはなかなか面白いものが撮れそうだぞ」

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 かくして。
 おばあさんを巡って、三つ巴の争いのゴングが鳴ろうとしていました。

 終わる。


拍手お礼用小説でした。
拍手バージョンアップついでにお礼小説も変えてみたのでこっちは公開してみる。
しかし。

……ご、ごめんなさい……普通に不二塚にするはずが……あの人が……(恐)
(そもそもあかずきんとか言ってる時点で不二塚じゃないような気もする。つかリョ塚だし……)

なに意味もなくロゴ作成してるんでしょうか。

こんな話をお礼小説と言い張るのもアレなんですが新しいお礼も相当アレです……すみません……。

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