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22.尻尾 |
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「すいません、部長はまだなんですか?」 だが、いまだ部長の大和の姿は見えない。 大和に用事のあった手塚は副部長・隠岐に問い掛けた。 「……ああ。大和なら、今日は兼部してるとこに顔出すからちょっと後れるってよ」 その答えに、手塚は少し目を丸くした。 「何か用事なら俺が聞いとくぞ?」 続けて手塚はごくごく素朴な質問を口にした。 「ところで、部長は兼部……していらっしゃったんですか?」 隠岐は少し口を噤んだ。言うべきか言わざるべきか悩んでいるようだった。 「……アート部」 手塚のもっともな問いに隠岐は苦笑した。 「という名の漫研だから。美術部とは別組織なんだ」 よく解っていなさそうな手塚のほか、部室内にいた人間は全てその言葉の示す意味を理解していた。 ジャージの上を羽織ながら、その会話を全て聞いていた不二は突き放すように言った。 「……どーせキャラクターの顔が書いてあるTシャツ着ながら一日中パソコンの前に座って『でじこちゃん萌え〜』とか言ってるだけじゃない?」 隣の菊丸に話し掛けるようにしていたが、その声は皆に聞こえていた。だが誰も反論しなかった。というか予想するところは皆同じだったので反論できなかった。 「……失礼な事を言わないで下さい」 その威勢のいい声を聞いて、部室にいた全員がドア付近……大和のいる方をうかがった。 「し、失礼って……」 大和は握り締めた拳で胸を叩いた。声を張り上げて吼える。 「僕はぷちこちゃん派です!!」 部室を越えて響き渡るその宣言に、全員一瞬フリーズした。 すぐに、部室内に失望と諦観と安堵が入り混じった溜息が満ちる。 「ちょっと見直しかけたんだけどな……」 そんな部員たちの感想はとにかく、大和はべらべらと語り始めた。 「五歳児にセーラー服とかぼちゃブルマというアンバランスな組み合わせがオタク心を限りなく甘く擽るんです!! 現在放映中の『でじにょ』ではワンピースになっていますが何故セーラー服を止めてしまったのかと、放映する側の理屈もわかりますがそれでもやはり問い詰めたい!! ……が、何よりも特筆すべきは毒舌! そう毒舌です!! 無口な彼女から時折吐き出される相手の心を深く抉る研ぎ澄まされたナイフのようなあの毒舌!! もうたまりませんよ!!」 萌えを語りだすと熱い大和に、さすがの不二もしばらく絶句していたが、ようやく自分を取り戻した。 「結局同じ……つーか余計タチ悪いじゃないですか!!」 テニス部恒例となりつつある二人の舌戦とそれを宥める副部長を遠巻きに見つめながら、乾はぼそりと言った。 「部長はとにかく……不二が何故あの濃い話についていけるのか、それが問題だ……」 一方手塚は、羨ましげに二人を見つめていた。 「俺も、がんばらねば……」 そんな状態の手塚の方に向き直った大石は、大きく汗をかいた。 今後の苦労を予感して、胃に重さを感じる大石だった。 「しっぽ→ねこみみ→でじこ」てな思考回路でした。 ……どんどん大和が一人歩きしてきたな……何言ってるのかもう私もさっぱり…… |