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7.首輪 |
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一部の人間しか知らないことではあるが、テニス部副部長・隠岐は小動物愛好家である。 :*:・。,☆゚'・:*:・。,★,。・:*:・゚'☆,。・:*: 「悪いな、付き合わせて」 「……ていうか付き合ってくれとか頼んだ覚えこれっぽっちもねえんだけど、どーして付いて来たんだお前」 店の中で、メモを片手に離乳食の棚を覗きながら、隠岐はご自慢の子猫についてべらべらと話し始めた。 「アビシニアンの雄なんだけどさ、元々は親父の知り合いで繁殖してる人からもらったんだ。まあうち、ずっと猫飼うの母親が反対してたんだよな。『猫は人のいうこと聞かないから嫌だ』って。ま、アビシニアンって種類は犬に似た性格だって話だからな。結構賢いらしいし。だからなんとか説得出来たんだけど、いざ飼い始めたら、母さんが一番可愛がってるんだもんなあ……。なんかデジカメで写真とかバシバシ撮ってるし。今日だってネットでお勧めの離乳食について調べたとかで、で、俺がこうやって買い物に行かされてるわけ」 そう言う君もメロメロみたいなんですが、と大和は突っ込みたかったが、顔をにやけさせている隠岐に今突っ込んでも無駄だろうと判断して黙っておいた。テニス部では「菩薩の部長・仁王の副部長」と並び称されていると言うのに、なんとにやけた表情をしているのだろうか。部員に見せてやりたいぐらいだった。 「ま、気持ちは解るかなー……まだ三ヶ月ちょっとで、片手に乗るぐらいちっちゃくてよー。今一番可愛い時らしくてさ、猫じゃらしとかで遊ぶとすげー反応してくれるんだよなー。ちょっと振るだけで飛びついてくるんだよ。こっちが遊んでやれなくても一人で勝手に楽しんでるし。あんなちっちゃくても野生の血なんだなーってちょっと感心したよ。もうそれが楽しくて楽しくて何時間見てても飽きないんだよな……。まだちっちゃいから、ベッド代わりのダンボールから一人じゃ出られなくて、必死によじ登ってる姿とかすげー可愛いんだよなあ……」 愛猫についての話だと妙に饒舌になっている自分を意識しないまま、隠岐は語りつづけた。猫に「一人」とか言ってる時点でだいぶ重症である。大和はそれを笑顔で聞き流していた。 「で、予防接種の時とか……って聞いてるのかお前」 :*:・。,☆゚'・:*:・。,★,。・:*:・゚'☆,。・:*: レジは夕方という時間帯もあってか、かなり込んでいた。隠岐はようやく目的の買い物を終えて辺りを見回すと、連れの姿が先ほどの場所には見えなかった。まあ店から出ていることはあるまい、と店内を歩き始めた。 「なんだお前、犬派だったか?」 「犬はですねえ……あの従順さっていうか、自分に必死に懐いてくれているところが可愛いんですよねえ……絶対に人のこと裏切りませんし誠実ですし、こっちからもしっかり信頼しようって思えるんですよ。あのつぶらな何の疑いも持っていない瞳で見上げられると何が何でも大切にしてあげようって気になっちゃうんです。もういつでもどこでもベッタベタに甘えてくれて『あなたの言う事なら何でも聞きます』みたいな感じは……まあ確かに、嫌いじゃないんですけどねえ……でもちょっと、主体性が感じられないところに……」 「…………へえ」 そんな隠岐の心中を知ってか知らないでか、大和は更に話を続けた。 「一方猫だと、気まぐれでしょう? マイペースだし、都合のいい時だけ甘えてくるじゃないですか。まあそれって確かに自分勝手だとは思いますけどね、ただ人に決して媚びなくて懐いてくれないプライドの高さが見てるこっちとしては可愛いんですよねえ……気が乗らないとつれない態度をとりますけど、甘える時は甘えてくれる……そう言うところが猫の良さですねえ。あと、猫の何事にも自由な感じってちょっと憧れますしねえ……。ほら、犬と自分って主従関係みたいなところあるじゃないですか、でも猫ってあんまりそういう関係に拘らない感じで、お互いに気を使わないでいいっていうか。ベタベタした付き合いになりませんから……」 「な、なあ……」 正直な話、解りたくはなかったのだけど。三年間の付き合いのせいでこの男の思考回路が見抜けるようになってしまっている自分が正直恨めしかった。 だが隠岐の言葉に、大和は首を傾げた。 ふと、大和の手に店の袋を見つけた隠岐は、ちょうど良かったとばかりに話を変えた。 :*:・。,☆゚'・:*:・。,★,。・:*:・゚'☆,。・:*: 数日後、小さな鈴のついた首輪を不二にプレゼントした大和は、その後数日間不二に口を聞いてもらえなくなる訳なのだが、それはまた別のお話。 テニスで猫っていえば菊丸だろうが、と書きながら思ってたのですが。ごめんなさい。 ……この話書くために猫サイト回ってたんですが。 ……ちなみに管理人は激しく猫派です。 |